野生動物の苦しみ

Wild Animal Suffering

"多くの人間は美的観点から自然を眺め、それについて生物多様性や生態系の健康の観点から考えるが、これらの生態系に生息する動物は個々の生物であり、それぞれの要求をもって生きているということを忘れている。病気、飢餓、捕食、排斥、性的欲求不満が、いわゆる健康な生態系には蔓延している。アニマルライツ運動における大きなタブーは、ほとんどの苦しみは自然に起因するものだということだ"―ニック・ボストロムの『Golden』より

―Abstract―

野生動物の苦しみは、アニマルライツの支持者の多くにも考慮されてこなかった問題である。だが、苦しみは誰がどこでどんな原因で経験しているものであるかに関わらず、苦しみである。その陰湿さと規模も考慮すればなおさら、今後も野生動物の苦しみについて、そのような無関心な態度を貫くことは許されない。

―Related Articles―

野生動物の苦しみがより少ない未来への取り組み - Animal Ethicsより

動物が苦しむのを許容すべきであるという見方は、ほとんど常に種差別主義的バイアスによるものである。これは、人間には当てはまらないからだ：ほとんどの人は、人が援助を必要としている時は、それが与えられるべきと考える。我々は人間が（例えば、飢餓や病気などで）苦しみ死ぬのは自然であると考え、人間を助けることを拒否したりはしない。

手術の不要な不妊化法開発の背景と現状

手術の要らない不妊化法を開発するために、どのようなアプローチが採られているのか、Linda Rhodesの論文 "New approaches to non‐surgical sterilization for dogs and cats: Opportunities and challenges." Reproduction in Domestic Animals 52 (2017)に簡潔にまとめられているので、その背景についての節を中心に、簡単に要約する。

Zoopolis、干渉と自然状態 by オスカー・オルタ

なぜ我々は、野生動物を救うために自然界に介入すべきなのか、なぜ介入に反対する意見は間違いなのか、このトピックにいち早く取り組んでいるオスカー・オルタが、ドナルドソンとキムリッカによる動物倫理に新たなアプローチを導入した著書Zoopolisの内容への反論を取り上げた論文の要約と抜粋。

『野生動物の苦しみに関する極めて不都合な真実』 The Vegan Strategistより

この苦しみと痛みの原因は―ヒトであるかどうかにも関わらず―経験しているものにとってはまったく無関係(totally irrelevant)である。ウサギにとっては、何らかの病気によって苦しんでいようが、密猟者の罠にとらわれていようが（どちらの苦しみも同程度の強さであると仮定すれば）、無関係である。

どれだけの野生動物が存在するのか　Wild-Animal Suffering Researchより

どれくらいの数の動物が存在しているのか、という率直な疑問に対する答えについて、驚くほど科学的研究がなされていない。動物種の数について様々な合理的な見積もりがなされているが、異なる環境での動物の豊富さに関するデータの収集手段は非常に多様であり、実際の個体数は比較的未検証である。ここでは、この数値についてのいくつかの見積もりを説明し、その精度を評価する。